浦高100年の森が開設され20年が経過した。植生調査をずっと続けているが、発表・公表の機会がないのでこの場を借り、開設初期10年間(2004-2014)の植物相(フロラ)の調査結果を記録としてここととどめておきたい。
浦高100年の森は広大な風布の里山から5ヘクタールの小さなエリアを切り取ったものである。浦高100年の森は植林が始めて多くの敷地が植林地となった。しかし、すべてが植林地となったわけではなく、浦高100年の森が開設される以前の植生をそのまま保存したところもあり、両者はモザイク状に混交している。植生調査は主に植林地とならなかったエリアに調査区を設置し、定点観測により変化(遷移)を追い続けてきた。
ここにあらためて10年間に記載した植物種の名をすべてリストアップし公表したい。別に投稿した「浦高100年の森、豊かな植生が維持されている」の引用文献でもある。
確認された植物は100科465種類である。「100科」と「100年の森」は偶然一致した。465種の内訳は,外来種39種(特定外来植物17種を含む)8.4%,絶滅危惧種等20種(CR:1種,EN:1種,VU:2種,NT:16種)4.3%,植栽種9種2.0%,絶滅危惧種等を除く在来種397種85.4%となる。なお在来種には自然帰化種28種を含んでいる。現地はクリ林の放置林と伝え聞くが,その植生は平地雑木林の植生に比べると,比較的外来種が少なく攪乱された痕跡は少ないとみる。
絶滅危惧種等については,絶滅危惧Ⅰa類(CR)としてタカオヒゴタイ,絶滅危惧Ⅰb類(EN)としてカザグルマ,絶滅危惧Ⅱ類(VU)としてトモエソウ,ツクバキンモンソウ,準絶滅危惧類(NT)としてナツノハナワラビ,ヒゲネワチガイソウ,ワダソウ,アズマイチゲ,アケボノスミレ,オカタツナミソウ,ツルカノコソウ,テバコモミジガサ,アマナ,キジカクシ,ワニグチソウ,キツネノカミソリ,ササバギンラン,サイハイラン,シュンラン,ノヤマトンボが記述された。このうち特筆すべきはサイハイランである。サイハイランは100年の森全体に分布しており,これだけの広さにこれだけ多数株の分布が確認できたことは,この100年の森の大きな特徴となっている。開花の時期は6月である。野生ランの自生地として保全に努める必要がある。またカザグルマは伝聞である(麗風の森には自生が確認されている)。紙面の余白を使用してこれらの写真を掲載する。
配列は、コケ・シダ・裸子・被子植物順、次に科は新エングラー順、次に属名はアルファベット順、次に和名はアイウエオ順 調査者は,牧野彰吾(14回卒),他 リスト中の [ ] については埼玉県環境部みどり自然課が著した「埼玉県レッドデータブック2011植物編 埼玉県の希少野生生物」を参照されたい。
●シダ植物
(トクサ科)スギナ
(ハナヤスリ科)オオハナワラビ、ナツノハナワラビ[埼準絶・NT]、フユノハナワラビ
(ゼンマイ科)ゼンマイ
(キジノオシダ科)ヤマソテツ
(コバノイシカグマ科)イヌシダ、ワラビ
(イノモトソウ科)イノモトソウ、オオバノイノモトソウ
(チャセンシダ科)トラノオシダ
(オシダ科)ヤブソテツ、ヤマヤブソテツ、アイノコクマワラビ[雑種]、クマワラビ、ベニシダ、ミサキカグマ、ヤマイタチシダ、ジュウモンジシダ
(ヒメシダ科)ゲジゲジシダ、ハリガネワラビ、ミドリヒメワラビ
(イワデンダ科)イヌワラビ、ヘビノネゴザ、ホソバシケシダ
●裸子植物
(イヌガヤ科)イヌガヤ
(ヒノキ科)サワラ[植栽]、ヒノキ[植栽]
(マツ科)モミ
(スギ科)スギ[植栽]
●離弁花類
(クルミ科)オニグルミ、サワグルミ[植栽]
(ヤナギ科)ヤマナラシ
(カバノキ科)アカシデ、イヌシデ、クマシデ、ツノハシバミ
(ブナ科)クリ、アラカシ、クヌギ、コナラ、シラカシ
(ニレ科)ムクノキ、エノキ、ケヤキ
(クワ科)カジノキ、ヒメコウゾ、クワクサ、カラハナソウ、ヤマグワ
(イラクサ科)アオカラムシ、カラムシ、コアカソ、メヤブマオ、ヤブマオ、ムカゴイラクサ、カテンソウ、アオミズ、ヤマミズ
(ビャクダン科)ツクバネ
(タデ科)ミズヒキ、イヌタデ[史前帰化]、ママコノシリヌグイ、ハナタデ、ヤブタデ、イタドリ、エゾノギシギシ[外来要注2]、ギシギシ、スイバ、ヒメスイバ[外来]
(ヤマゴボウ科)ヨウシュヤマゴボウ[外来]
(ナデシコ科)オランダミミナグサ[外来]、ヒゲネワチガイソウ[埼準絶・NT]、ワダソウ[埼準絶・NT]、ツメクサ、ウシハコベ[史前帰化]、コハコベ[外来]、ノミノフスマ、ミドリハコベ
(ヒユ科)イノコヅチ、ヒナタイノコヅチ
(モクレン科)ホオノキ
(クスノキ科)クロモジ、ダンコウバイ、ヤマコウバシ、シロダモ、アブラチャン
(キンポウゲ科)ヤマトリカブト、アズマイチゲ[埼準絶・NT]、ニリンソウ、イヌショウマ、サラシナショウマ、カザグルマ[埼絶危ⅠB・EN][全準絶・NT]、クサボタン、コボタンヅル、センニンソウ、ハンショウヅル、アキカラマツ
(メギ科)メギ
(アケビ科)アケビ、ミツバアケビ
(ツヅラフジ科)アオツヅラフジ
(ドクダミ科)ドクダミ
(センリョウ科)ヒトリシズカ、フタリシズカ
(マタタビ科)オニマタタビ、サルナシ、マタタビ
(ツバキ科)ヒサカキ
(オトギリソウ科)オトギリソウ、トモエソウ[埼絶危Ⅱ・VU]
(ケシ科)ミヤマキケマン、ムラサキケマン、タケニグサ、ナガミヒナゲシ[外来]
(アブラナ科)ヤマハタザオ、セイヨウアブラナ[外来]、タネツケバナ[史前帰化]、イヌガラシ
(マンサク科)マンサク[植栽]
(ユキノシタ科)アカショウマ、チダケサシ、ウツギ、ヒメウツギ、マルバウツギ、アジサイ[植栽]、ガクウツギ、コアジサイ、ノリウツギ、ヤマアジサイ
(バラ科)キンミズヒキ、ヤマブキショウマ、クサボケ、ヘビイチゴ、ヤブヘビイチゴ、ダイコンソウ、ヤマブキ、ミツバツチグリ、カマツカ、イヌザクラ、ウワミズザクラ、エドヒガン[植栽]、カスミザクラ、ヤマザクラ、ノイバラ、クサイチゴ、クマイチゴ、ニガイチゴ、モミジイチゴ、コゴメウツギ
(マメ科)ネムノキ、イタチハギ[外来要注4]、ヤブマメ、ヤブハギ、ノササゲ、サイカチ、キハギ、ネコハギ、メドハギ[史前帰化]、ヤマハギ、クズ、ハリエンジュ[外来要注4]、エンジュ[植栽]、シロツメクサ[外来]、ムラサキツメクサ[外来]、ナンテンハギ、フジ[植栽]
(カタバミ科)オッタチカタバミ[外来]、カタバミ[史前帰化]
(フウロソウ科)アメリカフウロ[外来]
(トウダイグサ科)エノキグサ[史前帰化]、アカメガシワ
(ミカン科)コクサギ、キハダ、イヌザンショウ、カラスザンショウ、サンショウ
(ニガキ科)ニワウルシ[外来]、ニガキ
(ウルシ科)カイノキ[植栽]、ヌルデ、ヤマウルシ
(カエデ科)イタヤカエデ、イトマキイタヤ、イロハモミジ、ウラゲエンコウカエデ、ウリカエデ、エンコウカエデ、オオモミジ、オニイタヤ、カジカエデ、ホソエカエデ、ミツデカエデ
(トチノキ科)トチノキ[植栽]
(アワブキ科)アワブキ、ミヤマハハソ
(ツリフネソウ科)ツリフネソウ
(モチノキ科)アオハダ、イヌツゲ
(ニシキギ科)オニツルウメモドキ、ツルウメモドキ、コマユミ、ツリバナ、ツルマサキ、ニシキギ、マユミ
(ミツバウツギ科)ゴンズイ、ミツバウツギ
(クロウメモドキ科)クマヤナギ、ケンポナシ
(ブドウ科)ノブドウ、ツタ、サンカクヅル
(シナノキ科)カラスノゴマ
(グミ科)ツルグミ
(スミレ科)アオイスミレ、アケボノスミレ[埼準絶・NT]、エイザンスミレ、オカスミレ、コスミレ、タチツボスミレ、ツボスミレ、ナガバノスミレサイシン、ノジスミレ、ヒカゲスミレ、ヒナスミレ、マルバスミレ
(キブシ科)キブシ
(ウリ科)スイカ、アマチャヅル、スズメウリ
(アカバナ科)ミズタマソウ、メマツヨイグサ[外来要注2]
(ウリノキ科)ウリノキ
(ミズキ科)アオキ、クマノミズキ、ミズキ、ハナイカダ
(ウコギ科)オカウコギ、ミヤマウコギ、ヤマウコギ、ウド、タラノキ、キヅタ、ハリギリ
(セリ科)シシウド、ミツバ、ヤブニンジン、ウマノミツバ、カノツメソウ、ヒカゲミツバ、オヤブジラミ
●合弁花類
(リョウブ科)リョウブ
(ツツジ科)アセビ、ヤマツツジ
(ヤブコウジ科)ヤブコウジ
(サクラソウ科)オカトラノオ、コナスビ
(カキノキ科)カキノキ
(エゴノキ科)エゴノキ
(ハイノキ科)サワフタギ
(モクセイ科)アオダモ、ケアオダモ、マルバアオダモ、ミヤマアオダモ、イボタノキ
(キョウチクトウ科)テイカカズラ
(ガガイモ科)ガガイモ、オオカモメヅル
(アカネ科)オククルマムグラ、キヌタソウ、クルマムグラ、ヤエムグラ[史前帰化]、ヨツバムグラ、ヘクソカズラ、アカネ
(ヒルガオ科)ネナシカズラ
(クマツヅラ科)ムラサキシキブ、ヤブムラサキ、クサギ
(シソ科)キランソウ、ジュウニヒトエ、ツクバキンモンソウ[埼絶危Ⅱ・VU]、ジャコウソウ、イヌトウバナ、クルマバナ、ナギナタコウジュ、カキドオシ、ラショウモンカズラ、イヌコウジュ、ヤマハッカ、キバナアキギリ、オカタツナミソウ[埼準絶・NT]、ツルニガクサ
(ナス科)イガホオズキ、ホオズキ[外来]、アメリカイヌホオズキ[外来]、ヒヨドリジョウゴ
(ゴマノハグサ科)トキワハゼ、コシオガマ、オオヒナノウスツボ、オオイヌノフグリ[外来]、タチイヌノフグリ[外来]
(ノウゼンカズラ科)キリ
(ハエドクソウ科)ハエドクソウ
(オオバコ科)オオバコ[史前帰化]
(スイカズラ科)オオツクバネウツギ、ツクバネウツギ、ウグイスカグラ、スイカズラ、ミヤマウグイスカグラ、ヤマウグイスカグラ、ニワトコ、オトコヨウゾメ、ガマズミ、コバノガマズミ、ミヤマガマズミ、ヤブデマリ
(オミナエシ科)オトコエシ、ツルカノコソウ[埼準絶・NT]
(キキョウ科)ソバナ、ツリガネニンジン、ホタルブクロ、ツルニンジン
(キク科)ノブキ、オクモミジハグマ、ヨモギ[史前帰化]、シラヤマギク、シロヨメナ、ノコンギク、オケラ、アメリカセンダングサ[外来要注2]、コセンダングサ[外来要注2]、ウスゲタマブキ、テバコモミジガサ[埼準絶・NT]、モミジガサ、ノアザミ、ノハラアザミ、ホソエノアザミ、オオアレチノギク[外来要注2]、ベニバナボロギク[外来]、ダンドボロギク[外来]、ハルジオン[外来要注2]、ヒメジョオン[外来要注2]、
ヒメムカシヨモギ[外来要注2]、ヒヨドリバナ、ハキダメギク[外来]、ウラジロチチコグサ[外来]、キツネアザミ[史前帰化]、オオヂシバリ、ニガナ、カントウヨメナ、アキノノゲシ[史前帰化]、ヤブタビラコ、
カシワバハグマ、コウヤボウキ、ナガバノコウヤボウキ、フキ、コウゾリナ、タカオヒゴタイ[埼絶危ⅠA・CR]、コメナモミ[史前帰化]、アキノキリンソウ、セイタカアワダチソウ[外来要注1]、
オニノゲシ[外来]、ノゲシ[外来]、ヤブレガサ、オヤマボクチ、アイノコセイヨウタンポポ、セイヨウタンポポ[外来要注2]、オニタビラコ、ヤクシソウ
●単子葉類
(ユリ科)ノビル、アマナ[埼準絶・NT]、キジカクシ[埼準絶・NT]、チゴユリ、ホウチャクソウ、ヤブカンゾウ[史前帰化]、イワギボウシ、オオバギボウシ、コギボウシ、コバギボウシ、トウギボウシ、ウバユリ、
ヤマユリ、ヤブラン、オオバジャノヒゲ、ジャノヒゲ、ナガバジャノヒゲ、ナルコユリ、ミヤマナルコユリ、ワニグチソウ[埼準絶・NT]、ツルボ[史前帰化]、サルトリイバラ、サルマメ、シオデ、タチシオデ、ヤマカシュウ、ヤマジノホトトギス
(ヒガンバナ科)キツネノカミソリ[埼準絶・NT]
(ヤマノイモ科)オニドコロ、タチドコロ、ヒメドコロ、ヤマノイモ
(ツユクサ科)ツユクサ[史前帰化]、ヤブミョウガ
(イネ科)アオカモジグサ、カモジグサ[史前帰化]、ヌカボ[史前帰化]、ヤマヌカボ、メリケンカルカヤ[外来要注2]、コブナグサ、イヌムギ[外来]、
ノガリヤス、カモガヤ[外来要注4]、タツノヒゲ、アキメヒシバ[史前帰化]、
メヒシバ[史前帰化]、ヒメイヌビエ、オヒシバ[史前帰化]、カゼクサ[史前帰化]、シナダレスズメガヤ[外来要注4]、ナルコビエ、アオウシノケグサ、オニウシノケグサ[外来要注4]、トボシガラ、チゴザサ、ネズミムギ[外来要注4]、スズメノヒエ、ササガヤ、ミヤマササガヤ、
ススキ、ケチヂミザサ、コチヂミザサ、ヌカキビ[史前帰化]、チカラシバ[史前帰化]、オオアワガエリ[外来要注4]、アズマネザサ、イチゴツナギ、スズメノカタビラ[史前帰化]、ヤマミゾイチゴツナギ、アキノエノコログサ、
エノコログサ[史前帰化]、キンエノコロ[史前帰化]、コツブキンエノコロ
(ヤシ科)シュロ
(サトイモ科)マムシグサ
(カヤツリグサ科)アオスゲ[史前帰化]、
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イトアオスゲ、オクノカンスゲ、ジュズスゲ、シラスゲ、シロイトスゲ、タガネソウ、テキリスゲ、ナキリスゲ、ヒカゲスゲ、ヒゴクサ、ヒメカンスゲ、マスクサ、メアオスゲ、ヤマオオイトスゲ
(ラン科)ササバギンラン[埼準絶・NT]、サイハイラン[埼準絶・NT]、
シュンラン[埼準絶・NT]、ノヤマトンボ[埼準絶・NT]