浦高での日常生活は、ユニークな面が多かった。いくつか思い出してみたい。
「バケツの水」と書くと、ニヤリとする諸兄は多いだろう。
勿論、空調などなかった時代、地球沸騰の今日ほどではないものの、真夏に50名以上もの生徒がひしめく教室の暑さはやはり半端ではなかった。
タオルを首に巻いて授業を受けたり、廊下側・校庭側の窓は無論全開で、風は通るものの、足元の熱気は溜まる一方。そこで、教師から見づらい位置の生徒の何人かは、毎時限、冷たい水に汲み替えたバケツを足元に置き、両足を冷やしながら授業を受けたものである。首のタオルは、万一立って前に出るときなどの咄嗟に、慌てて足を拭くための備えでもあったとか。
雨天、校庭でサッカーが出来ない昼休みなど、好き者が集まってトランプに興じる姿も多かった。
流行りすたりはあるものの、「ナポレオン」は、比較的多人数で遊べて、時間はかかるが人気のあるゲームだった。普段大人しいが、ナポレオンの時は存在感を増すキャラを持った友人もおり、普通のカードゲームと違い、役割分担がはっきりしているこのゲームは、人間性が剥き出しになる面もあり、楽しかった。
ナポレオンを宣言して、もしやあいつが副官ではないだろうな、と思うやつが結果的に副官で、やっぱり大負けしたりして、お互い罵り合ったり、人生ゲームのような面白さがあった。
クラスに囲碁将棋部の部長がおり、彼の主催で、クラス将棋名人戦が開催された。毎日昼休みに、2~3台の将棋盤を挟んでトーナメントで対戦し、筆者は決勝戦まで進んだ。部長が立会人兼記録係を務め、大盤解説こそないものの数人のフアンが囲む公開対局(?)であった。
当時流行の矢倉と美濃囲いの対決となり、美濃で戦った筆者が、実力伯仲のライバルを下し、初代クラス名人に輝いた!
部長がきちんと棋譜を残しており、簡単な感想戦を囲むなど、ある意味本格的な対局経験だった。
奇抜な企画が出て来たりすると、クラス中が夢中になって没頭するような、変った集団だった。
中でも、廊下磨きは出色だった!
美化委員が気まぐれに出した、みんなで廊下を磨き上げようという提案に、早速盛上がり、工程を考え完成日時を決める。物資調達係や作業主任者、歩行者整理員など役割分担を決め、昼休みと放課後、一定時間を使って清掃作業を行なった
(誤解のないように書くが、当然、見向きもせずに勉強に没頭している者もいた)。
バケツで水を撒き、洗剤のついたたわしでひたすらこすり、洗剤が消えるまで雑巾で水拭きし、一日の作業区画を完成させるまで続ける。他クラスの生徒が通れるように歩行者通路を設けて、誘導員が誘導する。歩行者通路は日ごとに移し替える。まるで工事現場である(笑)。
他クラスの者たちが何と思ったか知らないし、廊下が少し色が白くなったからって何なんだ、と思うかも知れないが、その夢中さは半端ではなく、今でも同級会での語り草である。