もくじ
  • 【表紙】
  • 【目次】
  • 【巻頭の言葉】
  • 発刊に当たって 戸口 晋 高23
  • 二十周年記念事業 中根 章介 高11(仮)
  • 創立二十周年を祝して 野辺 博 高24(仮)
  • 西部浦高会二十周年によせて 川野 幸夫 高13(仮)
  • 西部浦高会創設のこと 大塚 陽一 高19(仮)
  • 西部浦高会と私 西澤 堅 高11
  • 【第一部】浦高百年の森と
    共に歩む西部浦高会
  • 「浦高百年の森」づくり、に参加して 中根 章介 高11回
  • 浦高百年の森の植物希少種 牧野 彰吾 高14(仮)
  • 百年の森と西部浦高会の歩み

  • ■資料集
  • 【第二部】 座談会
  • 座談会ビデオ YouTube 2023年12月10日
  • 座談会ハイライト
  • 【第三部】 寄稿集
  • [浦高時代の思い出]
  • 教室風景 寄稿サンプル
  • 工芸に明け暮れたこと 寄稿サンプル
  • 片田舎より 髙山英治 高20回
  • 60年前の浦高時代 鈴木立之 高16回
  • サッカーに捧げる! 成井 正浩 高18回
  • 「理科」老教員雑感 江里俊幸 高21回
  • 甲子園で八重雲を 柏木浩太 高60回
  • [近況報告]
  • おせち料理は完全分業 寄稿サンプル
  • 【編集後記】
  • ウェブ記念誌発刊のこと 辻野 淳晴 高31(仮)


今の自分
 
             
 東北大学を卒業して今年でちょうど50年が経ちましたが、世間的には充分におじいさんであるにもかかわらず、本人はすっかりそのことを忘れて過ごしています。まだ歯科医師として現役であることがその理由として考えられます。実際のところ大学を卒業して歯科医師になったばかりの20代で今のこの状況を考えることなどとっても想像すら出来なかったと思いますし、よくもまあ同じ仕事を黙々とやってきたものだと自分ながら感心しています。父親が歯科医師だったからそのまま同じ職業についたというわけではないのですが、結局のところ後を継いだ形になっています。

 70代になってよく親の歳と自分の歳と比べることが多くなっている事に気づきます。皆さまも同様な経験をお持ちのことと思いますが。父は90歳で亡くなりましたので、それに倣えば後15年程頑張れるかもしれません。でもそれは誰にもわからないことでいいのですね。
 この投稿に当たっては、浦高の同窓会誌なので先ずは浦高と自分との関りから考えますと浦高に入った一番の理由は今も続く受験教育の結果であったということができると思います。高校はとりあえず入れる中で一番偏差値の高い高校ということです。あの頃は多くの人が同じような行動パターンであったのではないかと思います。加えて田舎者ですので都内まで通学する考えは全くなく浦高か川高かどちらかだったと思います。結果として浦高生になったのですが、ずっと以前から自分の性格で「今の自分」を楽しめない自分自身が情けなく思っていましたし、その時のその場に心底没入出来ない自分がずっといました。浦高生になったから超うれしいとか高校生になったらこんなことをしたいとかあまり思えなかったのです。きっと若者特有の自意識過剰と劣等感が混ざり合った感情が人一倍強かったのではないかと思います。それは今以て払しょくできたわけではないのですが、年を取って少しはましになってはきているかもしれません。そんな訳で浦高生活を十分に満喫出来なかったし、高校は希望大学に入る為の予備校的な考えだったのでした。いま西部浦高会に参加して皆様のお話しをお聞きしながら、はては残念な高校生活を送ってしまったものと後悔しています。

 さて話は現在の自分の医院の話です。初診以来かれこれ40年以上来院している患者さんがまだ相当数います。お付き合いの程度も色々なレベルがあって、あーまだ通っていると思う程度の方から、予約に入っているとこちらが緊張してくる方まで様々ですが、さすがここ数年は亡くなる方も増えて来ました。ここのところ顔を見ないなと思っていると、あの方亡くなりましたよと教えていただいたり、治療途中で入歯を技工所に製作依頼中に亡くなるなど、患者さんも80歳90歳と高齢ですので、いつもその点については特段驚くこともなく通常の事と考えて対処しています。また、多くの患者さんが高齢者なので治療方針も患者さんの持病、体調が先ず一番の知りたい情報になっています。歯も加齢と共に確実に弱ってきます。治療すれば必ず良くなりますといつも言えるわけにはいかないケースも多々あって対応に苦慮することが昨今の悩みの種です。ですが、長いお付き合いの患者さんはそれ以上に年寄りの生き方の先生だと思うようになってきていて、治療の間のちょっとした時に多くの示唆を頂けることが自分のこれからの宝ではないかと思い始めています。若い時から今を楽しめなかった自分に少しでも充実した人生を送るには、自分の周りの友人であったり、同窓生であったりまた私には多くの来てくれる患者さんがいてその方達ともっと大事にお付き合いをと思い始めています。そして当院の患者さんにとって私は歯科医師としては先生ですが、人生を歩む上では患者さんこそ先生だと思うこの頃です。
       







西部浦高会